ちょっと前から言われている3号機の湯気の件が気がかりです。
まず、東京新聞で東電の見解を見てみましょう(青字化筆者)。当初、湯気の出所を雨水だと言っていましたが、格納容器内部から出ている可能性もあるようです。
湯気 格納容器から漏出 福島第一3号機 上部損傷?注入窒素も外へ
東京電力福島第一原発3号機の原子炉建屋五階から発生する湯気は、雨水の蒸発だけではなく、格納容器内の水蒸気が外部に漏れたものである可能性が高いことが分かった。
格納容器には、爆発の危険がある水素を内部から追い出すため、窒素が継続的に注入されている。東電が窒素の注入量と回収量を調べたところ、回収量の方が一時間当たり三立方メートル少ないことが分かった。
事故発生当初、格納容器内は長時間、高温高圧にさらされ、容器上部のふた周辺部が損傷している可能性がある。
窒素注入による勢いに押され、格納容器内にこもる水蒸気が容器外に漏れている可能性が高いという。
格納容器内はおびただしい放射線量とみられるが、容器内から回収した気体に含まれていた水の放射性セシウム濃度は一ミリリットル当たり九〇ベクレルと意外なほど低い値だった。
東電は当初、建屋五階からしたたり落ちた雨水が、四〇度前後の熱がある格納容器のふたに触れて、水蒸気になり、冷たい空気によって湯気が発生したと説明していた。
格納容器内からの漏出について、東電の今泉典之原子力・立地本部長代理は「福島第一からの放射性物質の放出量を継続的に見直しているが、その量に影響していない」と、放出量は少ないとの見方を示している。-----------------------------------------------
また、元東芝の技術者、後藤さんがustream番組で湯気の出所について解説していたものが、youtubeに上がっているので、貼っておきますね。10分53秒辺りから。
http://www.youtube.com/watch?v=4CHJPQIbnAg
要約すると
湯気はやっぱり格納容器の上の雨水があたたまったのではなく、格納容器内から出ているのではないか。格納容器内部の温度差のせいで出ている(窓ガラスのく もりみたいに)かもしれないが、内部の核燃料の溶融物(デブリ)が冷却できてなくて、湯気が出ている可能性も否定できないみたいです。また格納容器はすで に圧力容器の底が抜けている状態。170度くらいは大丈夫だが、それ以上は漏れる。今の環境では格納容器の腐食が進むため、あと1~2年はなんとか持つか もしれないが、5~10年経つと大変なことになる
ということです。
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また、この件について、ジャーナリストの守田俊也さんの記事も紹介します。
明日に向けて(717)福島3号機の「湯気」は格納容器内部から・・・避難準備と警戒を!
東電はまだ雨水が格納容器ヘッドに加温されたという見解を捨てていませんが、しかしこの部分の温度は30数度と伝えられており、とても湯気を発生させる温度ではありません。とすれば湯気の正体は、もっぱら格納容器内部からのものであると推測されます。
これは非常に重要な問題です。考えられるのは格納容器のおそらくは底部にある核燃料の塊=デブリの温度が上がり、冷却水がこれまで以上に蒸気を発生させて格納容器内の圧力を高め、それが格納容器のヘッドと容器の接合部分の劣化箇所から漏れ出してきているということです。
福島原発事故発生時も、炉内の冷却ができずに加熱が進んで水素と蒸気が大量に発生し、ヘッドと容器の接合部分のシール剤が熱 によって劣化することで漏れを作り出し、やがて水素爆発を引き起こしたわけですが、今回もおそらくは同じ経路から内部の気体が漏れ出し、急激に冷やされて 湯気となったのだと思われます。なお東電はこの気体の中身が窒素であると推測しています。窒素は格納容器内で繰り返し発生する水素が、一定濃度になると再 び爆発を起こしかねないために、封入され続けているものです。
ここから推論できることは、明らかに格納容器内部ないし下部にある燃料体でこれまでになかった異変が生じ、温度上昇が起こっ ているということです。ただしそれがどれほどに深刻な事態であるのかは予想がつきません。おそらくは東電も十分には把握できていおらず、また事実を正確に 伝えているとは思えません。そもそも「湯気」の発生が確認されたのは18日です。もう10日近くが経っている。東電はそれほど経ってようやく格納容器内部 からの漏れの可能性を認めたのであり、その間、10日間近くも現実を的確に発表できずにきているわけです。
また湯気が窒素であるとするならば、水素爆発を防ぐために封入を続けているものが漏れ出してきてしまっているのですから、当 然にも水素爆発の危険性も高まってしまうことになるのであって、この点で、格納容器内部のものが漏れ出してきているのは大変な問題です。もちろん、格納容 器内部には大変な量の放射能があるわけですから、大気汚染を再び三度、汚染している問題もあります。
非常に悩ましいのは、こうした東電の発表から、現状がどれほど危険なのか。またどのような状態になったときに避難を決断すべ きなのかを判断するのは難しいということです。これまで東電は繰り返し、事故を小さく見せる発表を繰り返してきました。虚偽のものも多くありましたが、東電自身が、事故が小さいものであって欲しいと願うあまりに過小評価に至っているものも多くありました。要するに虚偽体質の上に、正常性バイアス=事態の深刻化を認めず、「正常」に戻っていくバイアス(偏見)を事態に被せてしまうことが重なっているのです。
こうした東電の発表に事故当初、著しい追随を行ったマスコミもまた、こうした東電の体質に影響され、事態を厳しく見る観点を 失っています。今回も、格納容器の漏れの可能性を指摘した東電のリリースを、多くの新聞社がそのまま流しているだけで、格納容器内の何らかの変化を示すこ の重大事態への考察はほどんとありません。
それゆえにこそ、私たちは「危機を強く感じたら」、即刻、危険地帯を離脱できる準備を固めておく必要があります。この場合の 何をもって「危機を強く」感じるのか。目安の提示ができないのが本当にもどかしいです。急激に周囲の放射線値があがることなどがひとつの目安になるとは思 いますが何度も言いますが、今の段階では、まずはいつでも実行できるように、避難準備を進めてください。
繰り返しますが今すぐ避難しなければならないという情報を僕が持っているわけではないです。僕が理解しているのは、今、格納 容器内で何らかの異常事態が発生しているという事実と、にもかかわらず東電はその把握、ないし発表までに10日間近くもかかってしまっているという事実、 マスコミもまったくあてにならないという事実です。だからこそ、先々のことも踏まえて、すぐに逃げられるようにしておくことが大事なのです。
前回も掲載しましたが、さしあたって以下の記事をご覧になり、正常性バイアスにかからないようにすることの重要性をつかんでください。 その上で具体的に避難のシミュレーションを行ってください。
全文はこちらで明日に向けて(703)原発事故に備えて避難の準備を進めよう!http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/afc8cc8dbdd1b15aa9071bb5273771d1またこれを機に、ぜひ遠く離れた友人・知人と個人間で防災協定を結んでください。どちらかが災害に襲われた場合に、他方が避 難を受け入れる協定です。これを結んでおけばいざというときに目指すところが鮮明なのですぐに行動に移れます。家族がバラバラになり、連絡が取れなくなっ た際の集合場所にもなります。反対に相手側に災害が発生した場合は、すぐに避難の受け入れ準備を開始できます。可能なら個人間防災協定は複数結ぶと良いで す。また物資の備蓄も進めてください。私たちの国の政府は、東南海トラフ地震にそなえて1週間分の水と食料の備蓄を訴えていま す。最低限、この準備をしておきましょう。災害時にコンビニの食料は半日で売り切れて供給が途絶えます。ぜひそれぞれで備蓄を行ってください。これはさま ざまな事情で避難に踏み切れず、やむを得ず自宅避難を選ぶことになったときにも非常に重要な助けになります。
湯気の原因が解明され、結果、何事もないことを祈ります。
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