十分な安全対策を取ることはもちろんですが、地元無視だけはあってはならないと思います。そして、地元といっても、原発立地の町や県だけでなく、事故があったときに影響を受ける地域で広く合意がなければ「地元の理解」を得たとは言えないのでは?
福井新聞より(青字化筆者)
大飯再稼働へ新基準 安全対策、それで十分か
(2012年4月6日午前7時43分)
停止中の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働をめぐり、野田佳彦首相と関係3閣僚が最終判断に向け2回目の協議を行った。経済産業省原子力安全・保安院がまとめた対策の妥当性を確認し「安全性に関する判断基準」として、きょう決定する。
「新安全基準」は保安院が東京電力福島第1原発事故の検証結果を30項目にまとめた対策をベースに急ごしらえしたものだ。それが再稼働に向けた安全対策として地元のみならず、国民の理解が得られるだろうか。
藤村修官房長官は会見で「暫定ではなく、他の原発再稼働の新たな安全基準」として、法的根拠を持たせる考えを表明した。さらに「地元同意」は必ずしも再稼働の前提条件としないとの認識も示した。単なる大飯原発への対応にとどまらず、国内原発の「再稼働の方程式」を視野に入れた発言といえる。
5月初めにも国内の全原発が停止する切迫した状況下、夏場の電力確保へ前のめりになる政府の政治手法である。枝野幸男経産相が近く本県を訪れる意向のよう だが、先に結論ありきで「地元の理解が得られたかどうかは政府が判断する」という発想が果たして地元重視の原子力政策なのか、課題となろう。
再稼働の条件に挙げたストレステスト(安全)の1次評価は机上のシミュレーションにすぎず、東日本大震災の巨大津波や地震が引き起こした予測を超えた過酷な自然現象が十分反映されていない。県が「安全対策」と認めてもいない。
今回の安全基準は実質、県の要請に答えた形で、全電源喪失事故の進展防止策など三つの基準で構成した。電源車の配備、建屋の浸水防止策など、事故後の緊急 対策で実施済みの項目を盛り込み、防潮堤のかさ上げや、事故対応拠点となる免震事務棟など完成に数年かかる中長期対策も列挙。30項目の実施計画をあらた めて示した格好だ。
しかし、新たな知見となる活断層の連動による耐震安全性や誘発される津波の評価をはじめ、地震による道路寸断、配備 された電源車、消防車の被害想定が十分なのか、オフサイトセンターの機能不全の懸念など不安材料は多い。「これで安全」というものはない。さらに多角的な検証が求められる。
県や地元おおい町がこれまで国に求めてきたのは「暫定的な安全基準」である。福島事故の究明が途上であり、中長期の課題もある。次回以降の定期点検時に対応していく項目も含め暫定としている。
だが、炉心のメルトダウン、放射性物質の大量拡散被害という過酷事故が発生し、原発の安全性に大きな不安が渦巻いているのが現状だ。再稼働に向けたハードルは格段に上がっている。国が「新基準」として判断するのはよほど慎重を要する。首相や閣僚が繰り返す「国民の理解」を地元同様に求めたい。
県が求める高経年炉の運転基準や新たな知見を生かしたシステムづくりなど、不安解消につながる取り組みをしっかり示し、何よりわが国の原子力政策、エネルギー政策について説得力ある説明が必要だ。肝心な原子力規制庁設置のめども立たず、国の信頼感は失われている。
あってはならない事故を踏まえた再稼働であることを政府は肝に銘じるべきである。
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